東京オリンピックは中止するべき?

日本の大手日刊紙が、東京オリンピックは公衆衛生を危険にさらし、既に新型コロナウイルスの対応に追われている日本の医療システムにさらなる負担をかけるとして、中止を求めました。

リベラル派の朝日新聞は5月26日に社説を掲載。菅義偉首相に対して、冷静かつ客観的に状況を分析し、今夏のイベントの中止を決定するよう促しました。朝日新聞はオリンピックの公式スポンサーでもあります。

開催まで2ヵ月を切る中で大会の中止を求めたのは、「東京2020」の公式スポンサーである多数の国内メディアの中で朝日新聞が初めてです。

500万部強の朝刊発行部数を誇る朝日新聞は、オリンピックに対する国民の大きな反対を挙げ、日本におけるコロナ危機にもかかわらず今夏の開催を主張する国際オリンピック委員会(IOC)を非難しています。

最近行われた世論調査では、国民の過半数以上がオリンピック開催に反対しており、約8万人の大会関係者、ジャーナリスト、サポートワーカーが入国することで、東京2020がコロナウイルスの大規模な拡散イベントになると考えている人も多いようです。

また、オリンピックの開催は、新型コロナウイルスとの戦いや、始まったばかりのワクチン接種から乏しい医療資源を奪うとの声が医師や看護師の団体からは上がっています。

先月末には、感染力が強い変異株の流行を受け、東京をはじめとする9都道府県で緊急事態宣言が発令されています。

首都圏における新型コロナウイルスの感染者数はここ数日、減少傾向となっているものの、入院患者数に大きな変化がないことから、菅総理はこの措置を来月まで延長する可能性が高いとメディアは報じています。

新型コロナウイルスの流行が始まって以来、日本では累計で72万6000人の感染者と1万2500人の死者が報告されており、これは、この地域の他の多くの国と比較しても多い数字となっています。その対応には賞賛の声もあったものの、繰り返される営業制限とワクチン接種の遅れにより、苛立ちに代わってきています。

朝日新聞は東京オリンピックに向けて何年もトレーニングを重ねてきた選手たちに同情を示しつつも、最優先すべきは公衆衛生であると強調。

同紙がオリンピック開催を批判したことで、ソーシャルメディアでは社説の見出しに由来するハッシュタグ「#東京五輪中止」が一時話題になり、水曜日の朝には2万件以上がツイートされています。

また、著名な経済学者が、オリンピックが中止された場合の経済的な損失は一兆8000億円規模に上るが、大会開催をきっかけに感染が拡大して緊急措置が課された場合の経済損失に比べれば、はるかに小さくなるという試算をまとめたことで、東京オリンピックの中止を求める声がさらに高まりつつあります。

野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏(元日銀審議委員)の試算によると、昨年春に実施された第1回目の全国的な緊急事態宣言による経済損失の推定値は6.4兆円、その後の緊急事態宣言ではそれ以上の損失とのこと。

オリンピック開催により感染が拡大し、再び緊急事態宣言が必要になれば、その経済的ダメージは中止した場合よりはるかに大きくなるのです。